++ 抗リン脂質抗体症候群について ++
抗リン脂質抗体症候とは
抗リン脂質抗体という
自己抗体によて引き起こされる不育症や反復血栓症です。
原因
母体の液性免疫反応が過剰な病態で一般 的にアレルギーと呼ばれています。
遺伝子が母親と異なる絨毛(胎児)の一部組織ない細胞を非自己の異物とみなして拒絶する流産です。
つまりこの病気の場合、赤ちゃんを養う絨毛という組織の血管がつまり、
赤ちゃんに十分な栄養が届かなくなり胎児が餓死の状態に陥り流産すると思われます。
流産の他にも妊娠中期・後期の子宮内胎児死亡、妊娠中毒症、 子宮内胎児発育遅延などの原因にもなります。  
検査 
抗核抗体(ANA)
抗核抗体(ANA)は非特異的自己抗体です。
異常診断値は40倍以上で、陽性値を示す場合非自己の異物を拒絶しやすい体質と考えられます。
不育症での陽性率は20%程度です。
胎児の拒絶の機序は未だ明らかになってはいませんが、膠原病と同じような免疫機序に拠って絨毛を直接拒絶していると考えられています。
拒絶される胎児は男児が多く、胎児心拍確認前の稽留流産が多くなります。
抗リン脂質抗体
抗カルジオリピン抗体IgG、抗カルジオリピン抗体IgM、抗カルジオリピンβ2GPI抗体、ループスアンチコアグラント(LAC) 、抗フォスファチジルエタノールアミン抗体IgG、キニノーゲン
抗リン脂質抗体(APA)はリン脂質に対する特異的抗体です。
血管内で抗原抗体反応がおこると血管中で血液が固まる血栓症を発症します。
膠原病感受性HLA抗原
膠原病発症の原因となる遺伝子、膠原病感受性HLA抗原を保有している習慣流産も本症に分類されます
治療法 
抗凝固療法
血液が固まりにくくする薬を用いる治療法
低容量 アスピリン療法、へパリン療法
* 最近は低分子ヘパリンの使用例も多く報告され、海外では低分子ヘパリンがスタンダードな治療法になりつつあります。
へパリンがなぜ不育症に有効なのかはいまだ不明な点も多いということです。
ヘパリンの投与方法としては、ほとんどの海外の報告では5,000単位を12時間ごとに皮下注となっています。
現在日本では皮下注用ヘパリンは三井製薬のカプロシンだけである
(私もこのカプロシンを5000単位皮下注していました。)
ヘパリン投与開始時期は妊娠反応で妊娠確認出来次第であるが、
過去の流産歴が妊娠6週以降の場合はまず低用量アスピリン療法を行い、
超音波検査で子宮外妊娠を否定した後、ヘパリンを開始するべきという意見もある。
ヘパリンは妊娠をとおして投与し、分娩の1日前には中止する。
もし緊急帝王切開など、ヘパリン投与中に分娩の必要がある場合、硫酸プロタミン(ヘパリン1,000単位に対し2.5mg)を希釈して10分以上かけて静注し、中和する(50mgを超えてはならない)ことが可能である。
ヘパリンの副作用としては骨粗鬆症が重要である。
平均して骨密度は1ヶ月で1%失われるといわれている。ヘパリン投与量が15,000単位/日を超した場合は炭酸カルシウム1.5g/日を投与するべきである。
ヘパリンのもうひとつの重要な副作用はヘパリン惹起性血小板減少症であるが、その頻度は1%未満であると報告されている。
漢方薬内服
柴苓湯の自己免疫異常不育症への有効性が東大の研究チームによって基礎医学的に明らかにされました。
免疫抑制療法
カノクリニックHP引用
【参考文献】
産婦人科の実際 Vol.49. No.3 2000
「抗リン脂質抗体と不育症」
 杉 俊隆 牧野恒久
産婦人科の世界 Vol.49.No.11 1997
「習慣流産抗リン脂質抗体陽性の検査、治療」
 杉 俊隆 牧野恒久