英国自閉症協会の対応
2003年の9月に熊本で行われたNAS講演会の席上、『MMR(3種混合)ワクチンやアマルガムが自閉症発症の原因ではないかとすることに対する英国自閉症協会の対応はどうなのか?』という質問に対して同協会リサーチディレクターのリチャード・ミルズ氏はおおよそ次のように答えました。



 これについては1998年、ウエークフィールドらがロンドンにあるロイヤルフリー病院で調査を行い、Lancetという英国の医学雑誌に自閉症とMMRワクチンの関係についての論文を発表しています。これは調査対象となった子どものサンプル数が少ないのですが、その結果が英国のメディアで広く取り上げられ、今もこれが使われています。それで実際MMR(3種混合)ワクチンは混合ワクチンにするのではなく別々にしてほしい、それぞれのワクチンとして接種してほしいという声が高まりました。

 しかしながら英国政府は別に科学的根拠がなく、自閉症の発症に対してMMRワクチンが原因ではないということでそれを否定しました。そして政府は何をもってしても100%の安全のものはないとも述べました。これに対して英国の一般国民は『これは例えば狂牛病の出た後の牛が(牛肉が)安全だというのと同じじゃないか』と、そして『政府が安全だとか害がないと言った場合は気をつけなさいというサインだよ』と皮肉っぽくこう言っています。

 しかしMMRワクチンの場合はこれ(英国政府の言ったこと)は正しかったのです。理由は違います。実はMMRワクチンというのは恐らく関係がないのではないかと思われます。なぜなら日本を見た場合MMRワクチンというのは13年前に中止になっています。 MMRワクチンというのが13年間なされていないにも関わらず(日本における)自閉症の発症率は上がっていますから、決してMMRワクチンのせいで上がっているのではありません。英国政府が意としたとは別の理由で実はそれ(英国政府の言ったことは正しいということ)が裏付けられているのです。

 では自閉症協会の立場はどうかというと、自閉症協会の立場はこの件に関しては英国政府の考えを支持する立場をとる、すなわちMMRワクチンが自閉症の原因であるという説には根拠がないということです。従って科学的な根拠ではなくて非常に感情的な所からMMRワクチン(3種混合)に反対するようなものと思います。

 もちろん自閉症協会の会員の中にはMMRワクチンが自閉症の原因であると信じている人もたくさんいます。そういった人たちは自閉症協会がこのMMRワクチンが原因であるということに支持する側にまわっていないことに不満をもつ人たちです。しかしながら自閉症協会としてははっきりと科学的な根拠をもって提示されたものでない説を支持するのはこれは無責任な態度であるということで科学的な根拠がはっきりするまではこれを信用できないと思っています。