「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」

                      (紀貫之『土佐日記』より)

 そう、あれは若き殿方が「恋ヶ浦海岸」で「さぁふいん」なる波乗りの季節が始まった

4月のことでした。

 ワタクシ、その時、串間市市木(いちき)の「たぎり荘」で静養していましたの。その

時に出会ったご老人のお話をさせていただきますわ。

 そもそも、ワタクシが「たぎり荘の店主」と勘違いして、声をおかけしたことがきっか

けでございましたの。

「この近くに鉱泉が飲めるところはございませんかしら?」とお尋ねしますと、そのご

老人は快く飲泉場に案内してくださりましたわ。そして、

(1)  この鉱泉が世界的に珍しい泉質であると、かなり昔に当時の大学が挙って研

究に
来たことがあること。

(2)  20年までは浴槽が「五右衛門風呂」であったのが、鉱泉を直接加熱すると、

成分が変化し、浴槽をいためるので、現在は鉄管を通して間接的に加熱して、浴

槽に引いていること。

(3) 「たぎり荘」の業績が芳しくなく、近い将来閉鎖するかもしれないこと。

などをお話してくださりました。すべて地元の人から聞いた話らしいですけれども。そして、

このご老人は「おれぁ、ここ(市木)に来て9年目になる。そろそろ戻らなければ・・・」

とお話なさるの。私が「ご事情がよく理解できませんの。もう少し詳しくお話してください

ませんかしら?」とお尋ねしました。

 このご老人は、川口さんとおっしゃる方で、御歳75歳。出身地は北海道の稚内市との

ことですの。冬の時期は、ここに来て夏になると稚内にお戻りになられる生活を9年間、

続けてこられたとお話しておりました。稚内から串間までは約3,000km、約1週間

かけて移動なされるとのことですわよ。

 ワタクシも2日間で1,000km移動したことがありますの。しかし、生来虚弱なワ

タクシ、途中で気が狂いそうになりましたわ。

 川口さんによると、

(1) 車で寝るときは、危険を回避するために、昔は冬の海水浴場墓場で駐車し

て休憩していたが、今は「道の駅」がたくさん出来たので楽になった。

(2)   車で寝るときは、寝巻きに着替えたほうが疲れは取れる。

(3)  私(川島さん)の車は、木材で特別に幌をつくっている。そのほうが具合は

いい。

とお話なさいましたわ。

 ワタクシがこの川島さんを「ただものではございませんわね、この御仁。」と思った

のは、大分県山国町の「道の駅」近くにある無人温泉をご存知でしたことですの。正直、

稚内のお方がこの温泉を知っていたことに驚きましたわ。

 ちなみに、この川島さん以前、朝日新聞から取材を受けて、記事になったことがある

ような話
もなされておりましたわ。

 九州の南端で、北海道の北端の御仁とお会いして、お話ができるなんて、なんとロマン

チックなことでしょう。
惜しむらくは、御仁がもう少し若ければなおよろしかったので

しょうけど・・・