自閉症の特性と自閉症児・者への接し方



宮崎県自閉症協会


 

この資料は、本県支部が自閉症およびその周辺障害の特性への理解と、それらの障害を持った方に対する療育・教育・福祉の充実を目指して作成したものです。これまでにも、ボランティア研修会や、療育キャンプのしおりへの掲載などに役立ててきました。今後も、各種の啓発や学習などに活用していく予定です。


自閉症とは・・・?


 自閉症およびその周辺障害は生まれつきの中枢神経系の障害(脳内の情報処理機能の障害)で、現代の医学では原因の究明は成されておらず,治療法も確立されていません。しかし、適切な療育により各種能力を伸ばし、多くの生活スキルを獲得することは可能です。自閉症の周辺障害とは、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などの各種発達障害のことです。

 先天的な障害ですから、育て方や家庭環境、心因性のショックなどが原因で引き起こされるということは絶対にありません。また、「自閉」という文字からくる、引きこもりがちでおとなしいという認識も誤りです。

 以下のような障害特性が見られます。ただし各個人や発達段階によって、特性の現れ方や程度はかなり異なりますし、特性の全てが必ず現れるというわけではありません。  

 行動に落ち着きがなく、多動である場合が多い。

 言葉の発達が遅れ、オウム返し(相手が言ったことをそのまままねしてしまうこと)が見られたり、言葉は獲得していても、会話に特徴的な特性が現れたりするなど、コミュニケーション能力上の問題が生じる。

 会話をする能力は備わっていても、会話の内容が一方的だったり、十分かみ合わなかったりする。

 クレーン現象(欲しいものなどのところへ相手の手を引っ張って行こうとすること)が見られる。

 視線を合わせない、身体への接触を嫌がるなど、家族や周囲の人とのコミュニケーションがうまくとれない。

 感覚過敏や感覚の一貫性がない。(敏感な部分と鈍感な部分の混在:ある音には敏感に反応するのに言葉をかけても振り向かない、衣服が少し濡れただけで脱ごうとするのに水遊びは延々と続けるなど・・・)

 強いこだわりを示す。(同じおもちゃや本、ビデオの同じシーン、同じ道順や座席、特定の衣類、限られた遊びや食べ物、一定の行動や動作などにこだわる)

 周囲の環境の意味を理解しづらい。(徘徊や迷子が生じやすく、危険や不安に対する認識も育ちにくい)

 強い嫌悪感やストレスにより、パニックや自傷行為(自分の頭をたたくなど)、他害行為(物や人に八つ当たりすること)などの二次的な問題の誘発が見られる。
以上の障害特性に起因した行動は本人が意識的に行っているのではなく脳の器質的な障害に起因します。それらの問題行動的な部分は、適切な療育やサポートにより十分防げますし、解消・軽減することができます。



効果的な療育のあり方は・・・? 

 自閉症児・者は、私たちのように言葉の意味や場の雰囲気を理解したり、表情を読み取りながら相手との意思を通わせることがうまくできません。そこで、周囲の人たちがそのことを理解していないと「変な行動をとる子(人)」、「変なことばかり言う子(人)」といった誤解が生じてしまいます。ですから療育にあたる人は、先ず自らが関わっている自閉症児・者ひとりひとりの障害から起因する特性(個性)を理解するとともに、周囲に対して自閉症についての理解の輪を広げていこうとする姿勢が必要です。

 自閉症児・者は言葉によるコミュニケーションが困難だったり不十分だったりする場合が多いのですが、視覚から入ってくる情報に対してはとてもよく理解したり、記憶したりすることに優れている(視覚優位)ようです。そこで、指示やスケジュールを伝えるときに、具体物や写真、絵カード、言葉カードなどの目に見える情報を用いる(視覚化)と効果的です。 ただしこの場合、本人の能力や特性を十分理解したうえで、本人が理解できる方法を用いることに留意すべきです。また、ある程度言葉が理解できる人に対しても、複雑な表現や抽象的な表現は避け、短くて具体的な表現を用いると理解しやすいようです。さらに、できるだけ否定的な言い回しを用いずに、肯定的な言い方をした方がその意味を理解しやすいようです。

 (例) ×「遊んだ後は、おもちゃをきちんと片付けないとダメですよ。」
     ◎『○○くん(さん)、おもちゃを片付けます。』

 自閉症児・者にとっては、言葉と同様に生活空間もできるだけ具体化されていたほうが、その意味がわかり混乱をまねきにくいようです。学校の教室や一部の公共の場においては、同じ場所で勉強や作業をし、更衣もし、食事もするというふうに、自閉症の方にとって理解しにくい構造となっている場合があります。そこで、教室などでは、畳やマットを敷く、床にテープで区画を示す、ついたてやカーテンを設置するなどして、どこで何をするのかを明確にする(物理的構造化を図る)とよいようです。その際、それぞれの場所を複数の目的で利用せず、「この場所ではこれ・・・」と決まっている方が、本人も理解しやすいようです。

 脳の情報処理機能の障害であるため、私たちのようにいくつかの情報を同時に処理していくことが困難なようです。例えば、提示された資料に目を通しながら相手の話を聞きつつ、次に自分がどのように返事をしようか考えるなどといった、私たちが通常なにげなく行なっているようなことが、彼らにはたいへん困難だと思われます。そこで、見る、聞く、考えるといった一つ一つの情報処理を集中して行なえる環境を整えるとよいようです。そのためには療育する側が、常に心にゆとりを持って取り組む必要があります。つまり、何かを見せながら同時に声をかけたり、過度に言葉をかけたりせずに、見せたあとに一呼吸おいて話しかけたり、ひとつ言ったあとに考える時間を与えてから次の言葉をかけるなどの工夫が必要です。

 時間の流れの中に自分自身を位置付けることの苦手な自閉症児・者にとって、生活の見通しが立っていること、つまり、「いつ」「どこで」「何を」「いつまでするのか」さらに、「その次に何をするのか」ということがわかっていると、それだけでとても安定して過ごせます。そこで、本人が理解できるかたちでスケジュールを示してあげるとよいようです。特に本人が、そのときにしたくないことをさせようとするときや、逆にしたいことを我慢させるときは、そのこと(我慢する時間)に終わりがあることをきちんと伝えないと、好まない状態が永遠に続くと思って、大きな混乱やパニックを引き起こしてしまうことがあります。その際、「ちょっと待って」とか「もう少し・・・」という抽象的な表現を用いるよりも、時計を理解できる場合は「〇時〇分まで・・・」とか、数唱して「10までだよ」と伝えたり、音の出るタイマーを利用するなどの具体的な時間の示しかたが理解しやすいようです。

 自閉症児・者は、経験を通じてさまざまなことを学んだり概念を身につけていくことが困難な場合が多いため、場所が異なったり季節が変わったりすると、きちんとできていたことができなくなったりすることがあります。ですから、「これはできていたはずだ」とか「できるのに怠けているのではないか」と決め付けるのではなく、できなくなった原因を予想して改善を図るなど、それぞれの場面で根気強く導いていく必要があります。

 してはいけないことをしてしまったときは、その場で即座に「いけません」ということを伝えないと効果がありません。時間が経過したり場所が変わってしまうと、いくら怒られても、自分のどの部分を注意されているのかを理解できない場合があります。また、肯定的に言い変えられる内容のときは「〜します」と伝えるほうがよいでしょう。(例:「走るな!!」ではなく「歩きます」)さらに、絵をかいて何がいけなかったかを伝える、怒っている表情を見せる、×マークを用いるなど視覚に訴える指導が効果的です。ただし周囲が過剰に反応しすぎると、その反応に期待していけない行動を繰り返してしまうこともあるので、手みじかにわかりやすく伝えることを心がけましょう。

 自閉症児・者は一度身に付いた生活パターンを切り替えることが困難な場合があります。年齢が低い場合は許されることでも、大人になってからするべきでないことは早めに修正しておいた方がいいようです。彼らの療育にあたる人は、その人の将来の生活にまで見通しを持って、彼らと接していく必要があります。

 「混沌とした世界」に生きている自閉症児・者に対して、私たちが最初にしなければいけないことは、自閉症の特性(自閉症の文化)を理解することではないでしょうか。そして、その特性を繰り返し見つめなおすことで、さらに理解を深め続けていくことが大切だと思います。その理解を基盤として彼らに対する適切な療育・教育の環境を整えていくことが、彼らにとって自らの可能性を最大限に伸ばし、私たちと共に同じ社会の中で豊かな人生を送ることができる手助けとなるのではないでしょうか。



*ここからは知的障害児に対し、学校介助員制度の導入を要望する際に添付した部分です。


学校における介助のあり方は・・・? 
 ある程度言葉が理解できる自閉症児でも、学級全体に対する語りかけの内容を正確に把握することはとても苦手です。授業中や朝の会、帰りの会の連絡時に、本人の傍らで個別に具体的な説明(本人が理解できるレベルでの絵カードや言葉カードの提示などがあると、さらによい)があれば、混乱も少なく理解が深まると思われます。

 自閉症児にとって、昼休みなどの「何でも自由にしてよい時間」は「何をしていいか具体的にわからずに混乱をまねく時間」になってしまいがちです。そういう時間帯にどのように過ごせばよいのか(余暇スキル)を指導したり、適切な自立課題を与えることで、比較的落ち着いて過ごせるようです。

 生活のパターンが変化することを理解しづらい自閉症児にとって、学校で行なわれるさまざまな行事やその練習のときなどは、混乱しやすい状況であるといえます。そういうときに個別に対応し、スケジュールの指示やその時々の見通しを立てやすいように情報提供をしてあげると、本人も安定して共に行動できる場面が増えてくると思われます。

 自閉症児はこだわり(同一性保持)があるために、一度身についた生活習慣はなかなか切り替えるのが困難となります。そのため、本人ができることに対して過度な介助が行なわれると「これはしてもらうこと」というパターンができてしまい、本来なら自分でできることでも自分でやろうとしなくなることがあります。そのため、保護者や周辺の療育者と連携をとって、本人の能力、身辺自立の程度を的確に把握しておく必要があります。

 やってはいけないことについては、その場で即座に指導しないとほとんど効果はありません。「あの時、あそこで、あんなことをしたでしょう。あれはいけません。」と言われても、時間と空間における自らの位置付けが困難なせいもあって、自分のどこがいけなくて怒られているのかがわからないようです。指導すべきことが起こったときは、その場ですぐに何がいけなかったのかを伝え、そのときに怒っている表情を見せたり、いけないことを示す合図(×マークなど)を使って視覚に訴えると効果的です。逆に、過度の声かけや言葉で言い聞かせるだけの指導では、本人がいけないことを理解するのは難しいようです。また、しつこく怒ったりすると過度の嫌悪感が生じてパニックを起こしたり、逆に怒られることや周囲の過剰な反応に期待して、面白がっていけないことを繰り返すこともあるようです。



介助員にふさわしい方は・・・?

 自閉症は、目に見えない理解しづらい部分を多く含んだ障害だけに、その特性や対処の仕方に精通した方が介助することが最も効果的です。自閉症の方に対するボランティア経験のある方や、自閉症に関する知識や療育経験のある方がその介助にあたることが最も理想的です。自閉症児に対する学齢期における指導は、その子が発揮できる能力をいかに伸ばし、本人の就労などを含む将来の生活のあり方そのものを決定付けるうえで重要な意味を持っています。また、この時期の指導が本人にとって適切で効果的なものであれば、その先の二次的障害(パニックや自傷・他害行為などの問題行動)や、自閉症児・者に起こりがちな思春期の混乱の軽減につながるとさえ言われています。






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